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「野生に放せば半数が死ぬ」

その日一日中、何度もこの言葉が重く突き刺さった。
野生に放さなかったとしても、保健所に連れて行けばほぼ100%の確率で処分されてしまう。
ぼくが里親を見つけられなければ、そんな残酷な(というかあまりにも残酷すぎる)運命がこの小さな体に待ち受けているのだ。

これまでの人生で経験したことのないくらい、自分に重い責任があることを感じた。


なんとしてでも引き取り手を探さなきゃいけない。


そう思う一方で、心のなかでは猫を手放したくないという気持ちも湧いてた。
拾ってから一日世話してるうちに、猫の方も僕に懐いて横で一緒に寝たり甘えてきたりしてたし、僕の方もまるで自分の子供を持ったかのような、愛情に似た感情を持っていた。

出来ることなら本当にこのまま育ててあげたかったし、正直「友達の知り合い」とか、自分の与り知らないところに引き取られてしまうのは嫌だという気持ちもあった。
猫の立場に立てば、大切に育ててくれる人に引き取ってもらえるなら僕から離れようとまったく関係無いし、むしろ当分一人暮らしで満足に世話も出来ない僕にいつまでも保護されているほうが不幸ですらあるかもしれない。
なのに心の中では、猫を自分の目が届く範囲においておきたいという、自分本位でしかない感情を優先させようとする力が湧いていたのだ。



今考えると、実にアホらしい!

散々Twitterで「子離れできない親は罪だ」とか「過保護な親は子供の幸せよりも自分の満足感を大事にしてるだけだ」なんて言説に「そーだそーだ!」と言いながら嬉々として星を付けたりしてるくせに、いざ自分が親と同じ状況に置かれたらこれだ。
まさに、猫の幸せよりも自分の感情を第一に考えていたのである。


それでも、このときは自分の矛盾した感情にまったく疑いを持っていなかった。
いや、矛盾に気がついてはいたけれど見て見ぬふりをしていたと言ったほうが正しいかもしれない。

どっちにせよ「里親を見つけなければならない、けれども目の届く範囲に置きたい」という条件を満たす最良の解決策は、なんとかして祖父母の家に引き取ってもらうことである。
そして自分の感情の矛盾に気づかない哀れな僕は、さっそく祖父母の家に電話をかけたのである。


祖母「おぅ、どうした?」

ぼく「実は昨日猫拾ってんけど、うちでは飼えんくて・・」

祖母「猫?そんなもんあんた、飼えやへんやろ」

ぼく「そやねん、やから引き取ってくれるところを探しとって・・」

祖母「そうは言うてもなあ~、猫はひっかくやろ、うちではよう飼わんな~」

ぼく「そこをなんとか、他にアテが無いねん・・」

祖母「ほんなら捨てるしかないで、どっか山にでもほるか。御所に置いといたらええがな。」

ぼく「す、捨てるのは出来ん。さすがにかわいそうやし・・」

祖母「ほんなん言うてもあんた、情が移ったらしまいやで~勇気出してほらんと」

ぼく「ええ・・・」



交渉は失敗した。
人(特に孫)に対してはあんなに優しい祖母も、猫に対しては畜生も同然の扱いである。
哀れな僕は、望みが消えてしまったことへの絶望と同時に、簡単に捨てろと言ってしまう祖母の無神経さにも多大なショックを受け、猫を抱きながら人知れず涙した。


実家はダメ。祖父母宅もダメ。
叔母宅は犬飼ってる。
叔父宅は賃貸。

八方ふさがり。
もはや「自分の目の届かないところに引き取られる」シナリオは確実となった。




情がうつってしまったらしまいだ。
まさにこの時の僕は、三重弁で言う「しまい」だった。





そんな折に、ゼミの同期から「友達が飼いたいって!!」と連絡が来た。

僕がアホなことをしてる間に、有力な里親候補が見つかってしまった。



⑤へつづく

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